Thought of the Day

本業はSE、趣味は万年筆集め、模型作り、ギター改造なおっさんのブログです。

秒速5センチメートル

夜勤なう!です。あと7時間くらいで帰宅できる・・・はず。けっこう暇だったりするんですが、まぁ、こういうのも必要なんですよ。

 

「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。」

 

今回は新海誠監督の2007年の作品、「秒速5センチメートル」について書いてみます。

 

「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の短編で構成されていて、通して観ても一時間くらいでしょうか。人によっては観終わって憂鬱になるようです。個人的にはハッピーエンドなんじゃないかと思ってはいます。

 

・「桜花抄」

 

主人公の遠野貴樹の幼い頃が描かれます。親が転勤族という似た境遇で同じ趣味を持つ明里と親しくなり、仲を同級生にからかわれながらも関係を育むものの、明里の引越しで関係は一度絶たれます。

 

中学に入学した後、突然、明里から手紙が届き、文通という形で二人の交流は始まります。しかし、今度は貴樹の親が種子島に転勤することになり、貴樹は明里に会うべく栃木に向かう・・・というお話。

 

花吹雪の中、明里が踏切の向こうで振り返る場面など、ちょっと引いてしまう演出があることを差し引いても、よくできてます。大雪で電車が遅れて焦る場面から駅の待合室での場面、桜の木の下でのキスシーンと駅での別れまでは非常に印象的です。

 

貴樹が距離が離れても明里との未来を信じようとしているのに対して、明里は二人の道が分かれていることを覚悟していて、そのズレが切なくさせます。

 

だからこそ、明里は別れる際に貴樹に言ったのでしょう。

 

「貴樹君は、きっとこの先も大丈夫だと思う。絶対」

 

と。きっと大丈夫、というのは自分自身に対する言葉でもあったのではないでしょうか。

 

・「コスモナウト」

 

貴樹は高校3年生になっています。明里との文通は既に途絶えて、宛先のないメールを打つのが癖になっています。この話の主人公は転向してきた貴樹に一目惚れした花苗という少女。

 

同じ高校に通いたいからと猛勉強したり、貴樹が帰るのをこっそり待って偶然を装って一緒に帰ろうとしたりするほど純粋です。

 

4年間ずっと抱き続けた思いを、趣味のサーフィンで波に乗れたら貴樹に伝えることを決めて、ついに波に乗れた日、花苗は貴樹に無言で拒絶されます。そして、貴樹の優しさが無関心からきていること、貴樹の視界に花苗が入っていないことを悟り、思いを伝えられないまま別れを迎えます。

 

栃木で明里と再会したときに抱いた、明里を守れるだけの力が欲しいという貴樹の願いは、叶うことがないことが明らかになっていて、「One more time, one more chance」の歌詞を借りれば、”記憶に足を取られて”現実に向き合えない、前を向けない貴樹の姿がうまく描かれていると思います。

 

・「秒速5センチメートル

 

舞台は東京に戻って、大人になった貴樹は小学校時代に通学路にあった踏み切りで、大人になった明里とすれ違います。踏み切りを渡り終えた貴樹は振り返ってこう考えます。

 

「きっとあの人も振り返ると、強く、感じた」

 

貴樹は三年交際した恋人がいたものの、メールで別れを告げられます。

 

「あなたのことが今でも好きです。

 

でも、私たちはきっと1000回もメールをやりとりして、たぶん心は1センチくらいしか近づけませんでした」

 

三年間?勤めた会社を辞めた理由もこう振り返ります。

 

「この数年間、とにかく前に進みたくて、届かないものに手を触れたくて、それが具体的に何を指すのかも、ほとんど脅迫的とも言えるようなその思いがどこから湧いてくるのかも分からず、僕はただ働き続け、気づけば、日々弾力を失っていく心が、ひたすら辛かった。

 

そしてある朝、かつてあれほどまでに真剣で切実だった思いが、きれいに失われていることに僕は気づき、もう限界だと知った時、会社を辞めた」

 

既におぼろげになった記憶に、まだ足を取られているわけです。

 

一方、明里は結婚式を控える身で、実家で荷物を整理したときに、栃木で再会したときに貴樹に渡せなかった手紙を見つけて、昔のことを思い出します。

 

この後は山崎まさよしのPVみたいな状態になります。曲に合わせて、目まぐるしくカットが変わっていきます。手紙のやりとりがだんだん疎遠になっていく様子が痛みを感じさせるほどリアルです。

 

曲のラストで踏切の場面に戻り、貴樹の目に振り返ろうとする明里の姿が入ってきますが、それを隠すように電車が通りすぎていきます。

 

そして、電車が通り過ぎた後、踏切の向こうには誰も待ってはいませんでした。

 

誰もいないことを確認した貴樹が笑みを浮かべて歩いていく場面で映画は終わります。

 

三部はミュージックビデオみたいで、もう少し何とかしてほしいと思います。あえて語らないのが良いのかもしれませんが、監督による小説を読むと、物足りなさを感じます。

 

このラストシーンで、貴樹は栃木での再会から10年以上の時を経て現実を受け入れて、前に進み始めるわけです。そんなに時間かかるかよ!と思う人もいるでしょうが、まぁ、そんなもんでしょう。

 

映画が気に入った人は小説版を読むといろいろスッキリします。漫画版は映画で省略された三部がかなり細かく描写されて、踏切での再会の後まで描かれています。

 

映画だけだと10点満点で8点ですかね。

 

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